昔に比べて今の社会が悪くなったのは、人々の心が堕落したからだ。
だから、お説教をして道徳意識を埋め込む・・・。
このような発想の延長線上に、ベストセラー「美しい国」「品格」等があるとすれば、
筆者の主張は、まったく逆の「人の心は環境によって変わる」というアプローチでしょう。
日本人は「集団主義者か個人主義者か」を検討して、
日本人が実は、個人主義者であることを指摘します。
では、なぜ日本は典型的な集団主義社会なのかを明らかにするのです。
次に、社会の仕組みの違いとして著者は「安心社会」・「信頼社会」概念を紹介して、
社会の成員へのコントロールの利く「安心社会」から、個人が積極的にリスクをとっていく
「信頼社会」への社会の仕組みの変化を主張します。
それを踏まえて、社会現象としてのいじめ問題、企業による偽装・隠蔽問題を取り上げます。
これら問題の解決が、心の問題として解決するお説教では、うまくいかないことを指摘して、
この解決の方法を・・・。
具体的な解決策は、著作を読んでみてください。
このような事象の検討の末に、著者の規定する「安心社会」「信頼社会」の対立を、
やがて「統治の倫理」と「商人の倫理」という鋭い価値対立問題として提起します。
グローバル化・格差問題が生じている日本社会で、
これからの時代を担うべき価値観がいずれにあるのか。
筆者の主張は鮮やかです。
作者: | 山岸 俊男 (著) |
出版社: | 集英社インターナショナル |
出版日期: | 2008/02 |