他のレビューにも指摘のある通り、本書を「データブック」だと思って購入すると、期待を裏切られることになる。本書は、あくまで「経済政
策を中心とした各首相(各内閣)の政策を概観するガイドブック」であって、数値的なデータはほとんど掲載されていないからである。
しかしながら、「経済政策を中心とした各首相(各内閣)の政策を概観するガイドブック」としては、以下の理由により、購入に値する書籍だ
と思う。
(1)コンパクト
本書は新書版で刊行されており、比較的短い文章で各首相(各内閣)の政策が概観されている。したがって、経済政策を中心に、戦後政治の流
れを知りたいという方にとっては、大変有用な書籍である。
(2)経済政策を政治的な観点から分析
往々にして、経済学者は理論的な観点から経済政策を分析しているが、多くの経済政策は経済的効率性や有効性よりも、政治的なパワーゲーム
の帰結として実行に至るケースが多い(消費税は、その代表例といえるだろう)。本書では、まさにその政治的なパワーゲームを俯瞰した上で、
経済政策の解説を行っているため、そのような政策が実行に至った背景を知ることができる(但し、裏を返せば、経済政策の経済的効率性や有
効性はほとんど検証されていない)。
(3)国民経済に占める政府財政の肥大化が一目瞭然
本書では、国民経済に占める政府財政の割合を円グラフで図示している。それを見ると、政府財政の肥大化が一目瞭然となる。このような円
グラフは、他の書籍等で見たことはなく、この円グラフを見るだけでも、本書を閲覧する価値はあると思う。
作者: | 草野 厚 (著) |
出版社: | 角川書店 |
出版日期: | 2005/01 |