はじめに
日本語の第二人称代名詞の「アナタ」は昭和の初めごろまで目上の人にも使える敬称だったが、現在では普通の会話の場合、自分と同等あるいは目下のひとにしか使えないようになった。現在でも必ずしも使いやすくはない。いま、日本語では「あなた」という人称代名詞をあまり使われない。患者の家族から「アナタ」で呼ばれて失礼だと怒った看護婦長のこと(参照文化庁編1986—57)や、日本語を習いはじめの外国人から「アナタ」で呼ばれて感情を害したという例もある。しかし、中国語では相手にも目上の人にも対称詞として“您”か“你”を使うことが普通だし、中日辞典にも“您” か“你”の訳語は「あなた」となっているから,日本語学習者は第二人称代名詞を使用するとき,よく間違う。日本語学習者にとって第二人称代名詞を十分に理解するために、「あなた」を使えない場面を充分把握することが非常に大事だ。“您”や“你”をどのように訳すかをよく工夫する必要がある。そこで「あなた」と“你”および“您”との相違点を比べてみまう。
「あなた」について字引の説明がどうなっているかをまず確かめよう。
(1)あなた(代) 您nin 。どちらへ/您往哪儿去?
第二人称の敬语。日本語の“きみ”、“おまえ”、“てまえ”などの第二人称。“ きみ”とは同輩の友達に使う用語であり:“おまえ”,“てまえ”とは目下の人に使うものである。<精选日汉汉日词典〉姜晚乘,王郁良编 2005年版
(2)あなた[貴方](名)您,你。~方/您们。
<详解日汉词典>吴之荣、李孙华、周蕴石编 1999年修订版
(3)あなた[貴方]相手をさすことば。/您,你 注:軽い敬意をもって。 同等または目下に対して使う。<標准国語辞典> 旺文社 新訂版
(4)<彼方>「向こう」の意の雅語的表現。 貴方;相手を軽い敬意をもって指す<新明解国語辞典〉 三省堂、金田一京助など編 1989年第三版。
(5)相手の敬称。 You あのかた。 <日本語大辞典〉 讀談社,梅倬忠夫金田一春炎編 1989年版
中日兩国は一衣帯水で、二千年の友好の歴史を持っている。日本語の文字も中国の漢字を改造して作られたのである。この点から見ると、中日の文化がどんなに近いかが明らかである、甚だしきに至っては中日の言語の文化がおなじだと思っている西洋人もいる。しかし、私達は、中日両国が言語の文化の方面において大きな差異が存在していると知っている。
1挨拶の言葉や敬語から見る
日本語では「あなた」という言葉を使わないのに対して、中国語の場合は,普通“您”か“你”をっける。
(1) いま、お帰りですか。/您现在回去吗?
(2) お久しぶりです。お元気ですか。/好久不见,您身体好吗?
(3) 素敵なお洋服ですね。/您的衣服真漂亮。
(4) ご主人様はお散歩ですか。/您先生散步吗?
(5) 先生も映画を見にいらっしゃいますか。/老师您也去看电影吗?
(6) 何をさがしていらっしゃるのですか。/您在找什么?
(7) 今度大阪においでになるときは、ぜひうちにおとまりになってくたさい。/下次您来大阪时请一定住我家。
(8) ここのところがわかりません。もう一度説明してください。/这儿不懂,请您再解释一下。
(9) 午後、もう一度ご覧になりにいらっしゃいませ。/下午您再来看一次。
(10) 今年の夏休みはどうなさるつもりですか。/今年暑假您打算干什么?
以上の例に挙げられた「お」や「ご」などの接頭詞,あるいは敬語表現の中の尊敬語や謙譲語の背景に「あなた」という意味がちゃんと含まれているからわざわざ「あなた」と言わなくても済むわけである。中国語にはそのような便利さがないので.日本語を訳す場合。全部「あなた」を訳出しなければならない。日本語の「あなた」という人称詞は、その敬意が下降しつつあり、現代日本語では普通、目上の人に使わなくなっている。
2目上の人に人称代名詞「あなた」を使用する相違点
(1)(学生が田中先生に向かって) × あなたもビールを飲みますか。/你也喝啤酒吗?
(2)(子供が父に向かって) × あなたは英語ができますか。/你会英语吗?
(3)(弟が兄に向かって) × あなたの本ですか。/你的书吗?
日本語では目上に人称代名詞(即ち「あなた」)を目上に直接言うことはできない。
中国語は正反対である。この違いが生じた原因は日本語の対称詞の「あなた」はその敬意が失われる傾向があり、現代日本語では目上の人に使えなくなっているからである。一方、中国語では人称詞の“您”と“你”を目上の人に使っても失礼ではないので、使えるのである。
3主語の定義及び中国語を日本語に訳すとき、両国語に主語が存在する情況
(1)老师,您能喝多少酒?/先生はどのくらいお酒が飲めますか。
(2)老师,您能戒酒戒烟吗?/先生は酒やたばこがやめられますか。
(3)小李,你的字真乱,真没法看。/李さん、あなたの字は汚くて、読みにくいですね。
(4)田中,你念吧!/田中さん、読んでください。
(5)小张,你真是有办法!/張さん、あなたはなかなかやりますね。
主語の定義は《馬氏文通》に遡ることができる。《馬氏文通》では「起詞・主次」と呼び、「凡そ述べられんとする事物を表すものは起詞(主語)という」と定義している。
(1)と(2)の“老师”は、相手に向かって、呼びかけるときに使い、その後に、“您”という代名詞が必要で、“老师,您能喝多少酒?”となる。(3) (4) (5)もそれと似ている、日本語の場合は代名詞を使わないのが普通で、中国語の場合は代名詞を使うのが一般的である。(3)の日本語では「あなた」を使うのはなんとなく失礼になるが、中国語はむしろ逆で、呼びかけない限り相手の名前だけを使うのは不自然で、その代りに“您”か“你”という代名詞を使う。従って“田中,你念吧!”となる。名前の後に、“您”か“你”を使えば言葉が丁寧になる。以上の例文からもわかるように、中国語では主語の存在が非常に大切である。だから、名前の後に。必ず代名詞を使う。日本語は主語を用いなくてもよく、名前の後に、代名詞を使わなくてもよい。次に、中国の主語からその相違点を見よう。
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